「あれれ、あれ、あれ?」
おにぎり君がみると、自分の頭のてっぺんに、かわいい芽がひょっこりと顔を出しています。
「ああ~。やっと、顔を出せたよ!!」
かわいい芽のドングリは言いました。
「おにぎり君、ありがとう。神様のところへつれてきてくれて、おかげでうんと、大きくなれそうだよ」
おどろいて声が出ないおにぎり君に、さらに、神様がこう言いました。
「ほ、ほ~う。なるほど、なるほど、なるほどなあ~。これまた、すごいことになっておるぞ!!」
「え? またですか?」
「おまえ様の中で、別のタネたちの根っこが生えておるようじゃ。そら、そら、そら、もうすぐ、芽が出るぞい!!」
ニョキ!! ニョキ、ニョキ、ニョキ!!
今度は、おにぎり君の横のほうから、さらに、小さな小さな芽が出てきました。
「あれ、あれれれれ?」
どうやら今度は、花のタネが芽を出したようです。
「ああ。やっと、タネの中から出られたわ」
花のタネは言いました。
「おにぎり君、ありがとう。神様のところへつれてきてくれて。これで、お花をさかせそうだわ」
さすがの、おにぎり君も、あと、もう一つタネが残っていることはしっています。
キョロキョロと、自分の体を見て回ります。
すると、体のあちらこちらから、ニョ!ニョ!ニョ、ニョ、ニョ!!!と、さっきよりも、大きな芽が体中にいっぱいはえてきました。
「やあ~。やっと、神様に会えたんだね」
いっぱいの芽は、カキのタネたちでした。
「おにぎり君、ありがとう。神様のところへつれてきてくれて 。これで、おいしい実を作れそうだよ」
なんだか、おにぎり君は自分の体にいるみんなが幸せそうで、うれしくなってしまいました。
その時、神様が言いました。
「どうじゃ? おまえ様、このさい、おにぎりから、べつのものになる気はないかい?」
「べつのものですか?」
「わしのほこらを守ってくれる、山になってみてはどうじゃ? たくさんのタネたちもいることだ。きっと、みんなの山にもなれるであろう」
自分が大きなお山になる。
おにぎり君は、小さかった自分が大きな山になれるなんて、しかも、ずっと、神様のそばで風をよける役目につけるなんて、思ってもみませんでした。
おそなえ物だった自分が、この先もずっと、お山としてお役にたつことができる 。
なんて、すてきなことだろう。