「あれ、どこへ行ったのじゃ」
見回しても、ただ、星々が、銀の砂をまいたようにうずまいているばかりです。なんとも、おそろしくてたまりません。
王様は、あわてて、山をかけおりました。来た時に通った森はすでに消え、町に入っても、人っ子ひとり、ねこ一匹、見当たりません。宮殿も、しいんと、静まり返っています。
「おーい、だれかいないのかあ!」
王様は宮殿の中を、部屋から部屋へと探し回りましたが、自分の声だけが、ガラン、ガランとひびきます。
庭園にも出てみましたが、冷えた大地に大理石の柱が立ち並んでいるだけで、花も草木もありません。
「おお、寒い・・・」
王様はガタガタとふるえながら、あちこち、走り回りました。お腹はどんどんすいてきますが、ごちそうを持ってきてくれる人はだれもいません。
「ああ、ここに一切れのパンと1枚の毛布があればなあ・・・」
なさけない気持ちでいっぱいになって、王様は、
「どんな宝物を手に入れたって、それが何になる!? こんなだれもいない世界で、たったひとりぼっちだったら!?」
と叫びました。
すると、「ひとりぼっち」という言葉だけが、自分の耳に、ガンガン、ひびきました。
王様はその場に、ずんと、へたりこんで、わんわん、泣きました。生まれて初めて、声を上げて泣いたのでした。
「そうじゃ!」
ふと、王様は、自分が、まだ、つぼを抱えていることに気がつきました。
王様はつぼのふたを取ると、
「お願いだ。世界をもとにもどしてくれ」
と、逆さまにしてふりました。すると、中から、ジャーッと、水があふれ出し、たちまち、海となって広がりました。そして、大波がドパーンとうねったかと思うと、ポーンと太陽をはき出しました。とたんに、まわりは、ぱあっと、明るくなりました。