太陽がほしかった王様(3/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

兵士たちが身構えていると、
ドンジャーン ドンジャーン
デンジャーン デンジャーン
大地の底からひびくすさまじい音。
それは太陽が打ち鳴らすドラと太鼓の音でした。
その姿の何と恐ろしかったことか。燃えさかる巨大な火の玉の前では、目を開けていることすらできません。

それでも、赤ひげ将軍はこぶしをふり上げます。
「ひるむな!  今じゃ!」

兵士たちは太陽に向かって、力いっぱい、さおをふりました。
そして、かぎづめが太陽にひっかかったとみるや、すばやく、さおを象にくくりつけ、
「それ、引け!  ひきずり落とせ!」
人も象も、力の限り、さおを引っぱりました。

ドドドン ジャーン
デデデン ジャーン
ものすごい熱風が来て、象や兵士たちの体はちりちりと焦げました。
「引けや、引け!マガタの猛者(もさ)よ! われらの勇気を示すときじゃ!」

この時、太陽が、ふいっと、かすかな身ぶるいをしました。
とたんに、象も、兵士も、赤ひげ将軍も、ぽーんと、遠くへすっ飛んでしまいました。
たった一人、生き残った兵士が、ほうほうのていでマガタに逃げ帰り、
「王様、わが軍は全めつでございます」
と、ふるえる声で報告したのでした。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに