兵士たちが身構えていると、
ドンジャーン ドンジャーン
デンジャーン デンジャーン
大地の底からひびくすさまじい音。
それは太陽が打ち鳴らすドラと太鼓の音でした。
その姿の何と恐ろしかったことか。燃えさかる巨大な火の玉の前では、目を開けていることすらできません。
それでも、赤ひげ将軍はこぶしをふり上げます。
「ひるむな! 今じゃ!」
兵士たちは太陽に向かって、力いっぱい、さおをふりました。
そして、かぎづめが太陽にひっかかったとみるや、すばやく、さおを象にくくりつけ、
「それ、引け! ひきずり落とせ!」
人も象も、力の限り、さおを引っぱりました。
ドドドン ジャーン
デデデン ジャーン
ものすごい熱風が来て、象や兵士たちの体はちりちりと焦げました。
「引けや、引け!マガタの猛者(もさ)よ! われらの勇気を示すときじゃ!」
この時、太陽が、ふいっと、かすかな身ぶるいをしました。
とたんに、象も、兵士も、赤ひげ将軍も、ぽーんと、遠くへすっ飛んでしまいました。
たった一人、生き残った兵士が、ほうほうのていでマガタに逃げ帰り、
「王様、わが軍は全めつでございます」
と、ふるえる声で報告したのでした。