一人でも楽しいことを見つけるパワフル少女
『長くつ下のピッピ』
アストリッド・リンドグレーン 作
大塚勇三 訳
桜井 誠 絵
岩波少年文庫
9歳頃になると、漢字も読めるようになってきて、長編の児童文学作品を一人で読破できるようになってきますね。はじめて一人で読むのなら、同じ年の女の子が主役で、ストーリー展開の楽しい物語がいいでしょう。
筆者もその頃に夢中になって読んだのが『長くつ下のピッピ』です。この物語は作者のリンドグレーン女史の幼い娘が当時はやっていた『あしながおじさん』にちなんでピッピ・ナガクツシタ(スウェーデン語でPippi Langstrump)という名前の何でもできる女の子を想像し、お母さんであるリンドグレーン女史に、「ピッピの活躍をお話ししてほしい」とせがんだのがはじまりでした。
ピッピは9歳になる女の子で、スウェーデンの小さな町のはずれにある『ごたごた荘』という小さな家に、ペットの子ザルのニルソン氏と、馬と一緒に一人で暮らし始めました。お母さんは、ピッピがまだ赤ちゃんの頃に病気で亡くなり、その後は外国船の船長であったお父さんと一緒に世界中を旅しながら、9歳になるまで船の上で育ちました。しかし、お父さんはある嵐の日に、風で吹き飛ばされて行方不明になったのです。
ピッピは「お父さんは生きている」と信じ、船上暮らしをやめ、お父さんが買っておいた『ごたごた荘』で帰りを待つことに決めたのです。本来なら「かわいそうな身の上の女の子」ということになりますが、ピッピ本人はそうは思っておらず、非常に前向きなのです。
船員さんたちから、お料理も、避難時のロープ使いや人助けの方法など一通り教えてもらっていたので、地上での生活ではその知恵の数々でピッピは大活躍! そして世界中を旅していたので、9歳にして、かなりの博学です。(字を書くのは苦手ですが)そしてお父さんが残してくれたのは『ごたごた荘』だけではなく、小さなスーツケースにぎっしり詰まった金貨もありました。ピッピいわく、「私は地下に住むトロールのようにお金持ちなの」だそうです。
そしてピッピのトレードマークは本名(?)でもある“長くつ下”です。ピッピは赤毛の髪をいつもきつい三つ編みにして、自分で作った青い洋服に黒と茶色の“長くつ下”をはき、黒いブカブカの大きな革靴を履くというユニークなファッションセンスが特徴です。
ピッピの地上での生活は、静寂な生活に慣れている街の人たちの注目の的となりました。『ごたごた荘』のお隣のトミーとアンニカという兄妹とともに、繰り広げられるピッピのちょっとした冒険の数々は、小さなお子さまの豊かな想像力を育むことと思います。