なんとか家にしのびこみ、内緒で妹と再会したコールフィールドは、「兄さんは何になりたいの?」と真剣に問われ、思わず「ライ麦畑のキャッチャー」と答えた。それはロバート・バーンズの詩に出てくる一節で、畑の崖から落ちていく子どもたちをキャッチして救いたい、という意味なのだ。
妹は兄を理解し、兄の家出に「ついて行く」と言い張る。困り果てたコールフィールドは、動物園に入り、雨の中、回転木馬に妹を乗せる。
回り続ける妹に「おうちへ帰るよ」と、初めて嘘のない言葉をかけ、えも言われぬ幸福感に浸ったことを、コールフィールドはいつまでも記憶する。
若者のバイブルとして、今も読み継がれる名作だが、発売当時はカリフォルニア州の教育委員会から悪書の認定を受け、学校の図書室から追放された。
1980年のジョン・レノン射殺の犯人が、警察につかまるまでの時間、歩道に座りこんで、この本を読んでいたエピソードも有名だ。