さえない山小屋造りのバーの、ちんけな灯りが、道の先に見えてきた。
オレは、路肩に停まった車のミラーで、前髪をちょっと直す。
コートの一番上のボタンをきっちりはめる。ドアベルを鳴らすと、白髪のマスターが出て来やがった。
「娘の誕生会に、ようこそ」
オレはうつむきながら、「お招きありがとうございます」と挨拶した。
マスターが部屋の奥に向かって「おい、クラス一の優等生が来たぞ」と言ったのが聞こえた。
とたんにオレは、クラスで見せるいつもの顔になり、情けないことに、これから出てくるだろうバースディケーキや、ビンゴゲームや、Rの笑顔にワクワクし始めちまうんだ、絶望的なほどありふれた12歳らしく。