ドイツのトルコ人家族のクリスマス

◆外国へ移ってきた「親」におこること
いうまでもなく、クリスマスはキリスト教圏のものです。
日本ではなじみのない習慣がいろいろあり、キリスト教に基づく価値も大きく反映しています。「外国人」の私にとって、ドイツのクリスマスはキリスト教圏の社会のかたちそのものを印象深く見せてくれる時期でもあります。

お父さんに木をねだるシリン。「親」の立場からいえば、子供を通じて入ってくる異文化だ

お父さんに木をねだるシリン。「親」の立場からいえば、子供を通じて入ってくる異文化だ

絵本の話に戻ると、私自身は宗教に関するこだわりはありません。また妻はドイツ人ですので、ドイツのクリスマスについて、「ネイティブから日常的に、少しづつ学ぶ」というプロセスがありました。しかしシリンの両親は両方ともムスリムの外国人です。クリスマスに対する拒絶感と、シリンの態度に対するとまどいは、随分と大きかったことでしょう。

作者のベクタスさんは1972年にドイツにやってきました。数年前にトルコに戻り、今も作家活動を続けていますが、ひょっとしてドイツ時代はシリンのお父さんと同じような体験があったのかもしれません。

少々うがった見方ですが、外国へ移ってきた「親」という立場から見ると、現地で育った子供を通して家庭内に異文化がはいってくるということ、それに対して熟考する局面があるということが浮かび上がってきます。日本も少しづつですが、外国人市民や外国にルーツを持つ人が増えてきています。彼らは日本の風習とどんなふうに付き合っているのでしょうか。(了)

筆者のHP:インターローカルジャーナル
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高松平藏 について

(たかまつ へいぞう) ドイツ在住ジャーナリスト。取材分野は文化・芸術、経済、スポーツ、環境問題など多岐にわたるが、いずれも住まいしているエアランゲン市および周辺地域で取材。日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。一時帰国の際には大学、自治体などを対象に講演活動を行っている。 著書に『エコライフ ドイツと日本どう違う』(化学同人/妻・アンドレアとの共著 2003年)、『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか』(学芸出版 2008年)のほかに、市内幼稚園のダンスプロジェクトを1年にわたり撮影した写真集「AUF-TAKT IM TAKT KON-TAKT」(2010年)がある。1969年、奈良県生まれ。 HP;インターローカルジャーナル