エルとくるみとソラ(1/7)

文・七ツ樹七香  

孝太のなにげないさそいに、くるみはおこったような返事をした。
「かわいいのぐらい知ってるよ。でも、わたしはもう犬のことキライだから。散歩もいかない。じゃあ、ごめんね、いまから絵の教室にいくから」
そう言って絵かき道具の入ったカバンをかけ直すと、くるみは逃げるように走り出した。

入れかわるように、公園の横に建つ新しい家からゆいの母親がゆったりと出てきた。
「ふたりとも、待たせてごめんね。じゃあ、お散歩いこっか。ねえ、さっき走っていったの、くるみちゃんじゃない?」
「おばちゃん、くるみは犬キライなんだって、かわいいのに変だよね?」
「孝太くん、変じゃないんだよ。苦手な人もいるんだから、ムリにすすめたらぜったいにダメ。ゆいもわかった?」

すると、ゆいは少し口をとがらせて言った。
「でも、くるみちゃんのおうちだって、前は飼ってたんだもん。エルっていうおっきくて、やさしい犬」

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。