エルとくるみとソラ(5/7)

文・七ツ樹七香  

ソラがくるみの家にきて、明日で2週間だ。
今日もすがすがしく晴れている。庭で画用紙に色をぬるくるみの横に、ソラはねそべっている。何度も向こうに押しやってももどってくるので、くるみもとうとうあきらめた。
「部屋の中にいたらいいのに」

くるみは口をとがらせたが、ソラがいるのにもすっかりなれてしまって、そばによってこられるのも、正直いうとそんなに悪い気分じゃない。くるみがなでてやったら大喜びするんじゃないかと思うけど、それはいつもお父さんやお母さんがやってあげてるから、と、くるみは自分の気持ちにフタをする。

絵がいちだんらくするとのどがかわいていて、くるみはリビングにもどった。すると、さっきまでそろってテレビを見ていたふたりのすがたがない。そして、ろうかでひそひそとお母さんの声がするのに気づく。くるみはそっと近づいた。

「そうね、トライアルの間に、もしくるみの気持ちが変わるならと思ったけど。あれじゃ、くるみにもソラにもかわいそうなことになるかもしれない」
(トライアル? トライアルってなに?)
なにか深刻(しんこく)そうに話している様子に、くるみはドキッとする。しかも話しているのはソラのことだ。お母さんのため息が聞こえた。

「わたしはソラちゃん好きだったから、残念だけど。ソラの行く先は、もうひとつ候補(こうほ)があるんでしょう?」
「ああ、そこもうちと同じ三人家族で、息子さんも犬が好きだっていうから」
残念そうなお父さんの声が続く。
(ソラが、よその家にいく相談だ!)

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。