ピイの飛んだ空(2/8)

文・七ツ樹七香  

「うわ! お父さん、なにこれ気持ち悪い!」
「スズメのヒナだ」
「スズメ?」
父親の意外な言葉にまゆを寄せ、秋斗(あきと)はもう一度おそるおそる箱をのぞいた。
すこしグロテスクではあるが、よく見れば確かに鳥の形をしている。

ちいさなはげ頭についた大きな目はとじられていて、羽根の生えそろわないツバサは、まさにちいさな手羽先だ。秋斗がそっと父の手をゆすると、お母さんとにらみ合いながらその箱を秋斗にわたしてくれた。

「・・・どうして持ってきちゃったのよ!」
「どうしてって、かわいそうじゃないか。巣だってこわされてるんだぞ」
「人間の営みの中に巣をつくるってことまで、スズメにとっては自然の内でしょう。いろんなアクシデントで命を落とすことはあるものよ」
「けどな、生きてるんだぞ。言われた通り、箱に入れて近くの木にかけといたけど、親だって来なかった」
「かわいそうだとは思う。私だって助けたい気持ちもある。でも、人の手を加えるべきじゃない」

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。