ピイの飛んだ空(4/8)

文・七ツ樹七香  

そして次の日、申しわけなさそうに帰ってきた父の手には、朝持って行ったのと同じ箱がかかえられていた。
「ダメだ・・・新しい建物作り始めたから、まわりがさわがしくてな。スズメなんて寄りつきもしなかった」
お母さんの大きなため息に、お父さんを出むかえるために二階からかけ下りてきた秋斗(あきと)が内心大喜びしたのはナイショだ。
これであのヒナは、うちの子になる!

「・・・こまったね。本当に保護するなら届出(とどけで)もしないと」
げんかん先でほほに手を当てたまま、こまり果てた様子でお母さんは首をかしげた。
「届出?」
「そう。野鳥を捕獲(ほかく)したり飼ったりは禁止されてるから。スズメだって野鳥よ、もちろん」
「え? そうなのか」
お父さんは、初めて聞いたとばかりに目を見開いた。
「物知らず」
「いや、ふつうあんまり知らないと思うけど。そうか・・・ううん」

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。