ピイの飛んだ空(6/8)

文・七ツ樹七香   絵・久遠あかり

すり餌(え)をピイ用に作るのはかんたんだ。お湯とすり鉢を用意すればいい。ピイはこのエサを気に入ったようで、そのうがパンパンになるまで食べては、すやすやとねむりについた。
それが数日続けば秋斗(あきと)の手つきも慣れたものだ。

子スズメの真っ黒な瞳(ひとみ)はぱっちりと開くようになり、かぼそかった声も耳にひびくほどに力強くなった。
ピイの赤くハゲていた地はだにはたくさんの黒い管が生え、それがわれると見慣れた茶色い羽根が顔を出す。たよりないヒナは日を追うごとにふわふわとスズメらしくなってきた。

そんなピイに満足しながら、秋斗はなやんでいた。
またたく間に育っていくピイに、まだやってあげていないことがあったのだ。
今日の朝にはと思っていたができなかった。もう先送りにするわけにはいかない。
夏休みの宿題を午前中やったら・・・、今日こそは「アレ」をやらないといけない。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。

久遠あかり について

(くどうあかり) 漫画家。主に児童向け、動物のお話を執筆。ハリネズミや犬を飼い自然と動物好きに。現在は保護猫と暮らしている。また、別名義(光晴ねね)で少女漫画やロマンスジャンルなどで活動中。 pixiv fanbox 光晴ねね https://nene-mitsuharu.fanbox.cc/