少女の心に光を灯したのは・・・

わたしのぼうし

佐野洋子 作・絵
ポプラ社
2022年6月22日刊

作品レビューで紹介する絵本『わたしのぼうし』表紙

◆思い出つまった帽子が

今回ご紹介するのは『100万回生きたねこ』で有名な佐野洋子さんが初期に創作、講談社出版文化賞絵本賞受賞作品です。

いつも仲良く一緒に遊んでいる二人の兄妹。
お兄さんは青いリボンのついた帽子、主人公のわたし(以下、「少女」)は、赤い花のついた帽子を持っていました。
どちらも少し古くて汚れています。
なぜなら、お兄さんとトンボとりに行った時も、動物園やデパートにお出かけした時も、どんな時もその帽子をかぶっていたからです。

その帽子にはその時のいろんな思い出がいっぱい刻まれていました。
でも、ある時、おばさんに家に向かう途中の汽車の中で、少女は窓から風にあたろうと頭を出した瞬間、帽子が飛んで行ってしまいます。
少女は泣き出し、お父さんやお母さんのどんな慰めでも心が晴れませんでした。

次の日お父さんがお兄さんと少女に新しい帽子を買ってくれるのですが、少女はその帽子をかぶらず、首のうしろにぶらさげたまま。
お母さんが何度かぶせても、またすぐうしろにずらします。

「だって、わたしのぼうしのようではないんですもの」少女は思います。
それから、しばらくしてある出来事をきっかけに少女の心に変化が訪れます。
続きはぜひ絵本で読んでみてください。(次ページに続く

えもり なな について

江森 奈々(えもり なな)1985年神奈川県生まれ。千葉県在住。幼少期より母から良質な絵本を与えられて育つ。幼い頃から絵を描くことが得意で、小学生の頃は漫画を描く。中学生になると美術部に所属し油絵を始める。灰谷健次郎の「兎の目」に感銘を受け、10代は日本や世界の児童文学を読みふける。現在、保育士をしながら絵本や童話、紙芝居の創作、読み聞かせを行っている。画家・イラストレーター、モデルとしても活躍中。絵本は1500冊以上読破。2023年be京都にて初のプチ個展を開催。パレットクラブスクール19期絵本コース卒業。トムズボックス2019冬季ワークショップ修了。 『絵本作家になるには、絵が描けないと無理ですか』(CATパブリッシング)の挿絵を一部担当。 ●YouTube:【なないろ本屋/7's BOOKSHELF】 ●Instagram:【nana_museum】