『プレッツェルのはじまり』
エリック・カール 作・絵
アーサー・ビナード 訳
偕成社
この絵本は、数年前、図書館で出会った絵本です。パンの歴史を調べている時に、検索にかかってきたのが、この絵本。私の大好きなプレッツェルの歴史がわかるとワクワクしていたら、とてもステキな絵本だったのです。
舞台は中世のヨーロッパらしき小さな町。その町の屋根が一番低いすみっこのお家がウォルターのパン屋さんでした。
朝早くから家族でパンをせっせと焼き、日が上ると町中から、そして国中からウォルターのパンを買いに来る人気のパン屋さんでした。飼い猫までが、パンを目当てにやってくるネズミ退治をしてウォルターのパンを守っていました。そしてこの国の王さまの朝食も、もちろんウォルターのパンです!
そんな順風満帆の、平和で繁盛していたウォルターのパン屋さんに危機が訪れます! それも飼い猫のミスが王さまの怒りにつながってしまったのです・・・。
国から出ていくよう命じられたウォルターは、1日だけ猶予をもらい、新しいパンの発明に挑みますが・・・。
ウォルターはどのように知恵を絞り、危機を脱したのでしょうか? あきらめかけていたその時に浮かんだアイデアとは?
これが今日、世界的に愛されているプレッツェルの起源とは、興味深いものがあります。それ以上に、この絵本は、プレッツェルの起源ではなく、もう一つのメッセージがあるように感じました。それは「あきらめない心」「チャレンジする精神」と個人的に思いました。
大人になって大成していることは、チャレンジし続けていたからだと思います。お子さんには、やり続ける大切さ、くじけずに続ける勇気を与え、そして大人にも重要なメッセージを伝えてくれる一冊となるでしょう。
絵本作家のエリック・カール氏は、アメリカに美術館があるほどの人気絵本作家ですが、元々はグラフィックデザイナーだったそうです。そのためか、町の建物、人々のお洋服、そして主役のパンに至るまで、特徴的な模様が施されていて美しい! そして日本語訳も日本を愛するアメリカ人翻訳者です。優しくわかりやすい文章も必見です。