いすから去った王子(2/7)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

ある時、ドラゴンを8匹も殺したと言うつわものがやって来ました。
たくましい体をみせびらかし、
「ドラゴンの炎に焼かれ、その血しおをあびたおれ様だ。いすにすわるごときは、たやすいことだ!」
と、せせら笑って、王女の窓の下に、どっかり、こしをおろしました。

みんな、たいそう、期待しましたが、50日後には、いすをけとばしました。
「ええい、ばかばかしい! あんな女、どうせ、厚化粧で、ごまかしているに決まっておる!」
よほど、悔しかったのでしょう。いすを地面にたたきつけてこわし、のっしのっし、帰って行きました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに