いすから去った王子(3/7)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

白鳥の羽の王子

そんなこんなで、挑戦する王子や、騎士たちは、めっきり、少なくなりました。
けれども、王女の美しさを聞きつけて、また、ひとり、王子がやってきました。
白鳥の羽をぼうしにかざした、まだ、ひげも生えそろわない、とても若い王子です。

王子は、窓辺にすわる王女を一目見るなり、すっかり、恋をしてしまいました。
お城に入った白鳥の羽の王子は、王様に、うやうやしく、言いました。
「どうか、王女様と結婚させてください」
王様は、若い王子を、疑い深い目で、じろっと、ながめてから、かたわらの王女に、目配せしました。

王女はうなずいて、
「100日間、いすにすわり通すことができたら、私は、よろこんで、あなたの妻になりましょう」
と、言いました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに