王様は、貴族たちといっしょに、さじきにすわり、飲んだり、食べたりしながら、見物します。
美しく着かざったご婦人たちは、ごひいきの騎士に、ハンカチをふって、おうえんします。
「私の騎士どのは、だれより、お強いわ」
「いえ、私の騎士様が一番よ」
町や村々から集まってきた人々も、めったにない、このすばらしい見世物に、すっかり、こうふんしています。
「えー、水はいかが! 冷たい、おいしい井戸水だよ!」
「とりのあぶり焼きだよ! 今朝、しめたばかりの、わしん家のとり!」
見物客を目当てに、物売りのテントは、どんどん、ふえていきます。
王子は死ぬほど疲れ、それでも、気を失って転げ落ちないように、いすをつかみ、やっとの思いで、体を起こしていました。
人々は、そんな王子のことなんか、てんで、お構いなしです。
そうぞうしい一日の終わり、王様は、はるばる、試合におとずれた騎士たちに、黄金のうで輪や、ピカピカのよろいかぶとや、ごうかなマントなどを、おしみなく、プレゼントしました。
「わが王女とワタリガラスの王子とが、あと、数日で、結婚することになる。みな、祝ってくれ」