いすから去った王子(6/7)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

100日目の太陽

プッププー!
「本日、97日目!」
その日は、お城の入り口から、王子のすわっているいすの前まで、赤いじゅうたんがしかれました。

100日目の日暮れには、王様に手をとられた王女が、しずしずと、このじゅんたんをふんで、ワタリガラスの王子をむかえに行くてはずなのです。
そして、王様は、自分の手から、王女の白い手を、ワタリガラスの王子へと、うやうやしく、わたすでしょう。
それは、どんなに晴れがましいしゅん間でしょう!
きっと、ワタリガラスの王子は、うれしさに顔を赤らめて、いとしい王女の手をとり、足取りも軽く、お城へと、わたって行くことでしょう。
その後にもよおされる結婚式は、どれほど、はなやかなことか!

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに