おしょうさんとかっぱ(2/5)

文・雪乃 椿  

おしょうさんはかっぱに、いいものを見せてやろうと言って、寺までつれてきました。

「なんだ、いいものって?」
「あれよ、ほとけさまじゃ。じっとお前さんを、見ていなさるぞ」
「どうしておいらを、見ていなさる?」
「わるさをするから、おこってらっしゃるのだよ」
ほとけさまを見ればかっぱはこわがり、わるさをしなくなると考えたのです。
かっぱはほとけさまの近くまで行って、じっと顔を見つめます。
「おしょう、このほとけはおこってなどないぞ。やさしい顔で、おいらを見ていなさる」
「やさしい顔で、おこっておられるのだ。お前さんには、それがわからぬか?」
「わからぬ!」

ほとけさまはだれにでも、やさしくほほえみかけるのでした。
だからこわい顔でなければ、かっぱにはわからないのです。

雪乃 椿 について

(ゆきの つばき) 京都市に生まれ現在も在住。英知大学イスパニア語イスパニア文学科卒業後、京都大学医学部附属病院で医局秘書として勤務。物の怪、陰陽師、仏像が大好きで、いつか平安時代の大スペクタクル児童文学を書いてみたいと思っています。