「あ、海だ!」
新一は急に元気になって、窓にはりつきました。
窓の外を通り過ぎていくかん板を、いちいち、読み上げます。
「かに・・・、つり船・・・、みん・・・。おねえちゃん、あれ、何て読むの?」
「『みんしゅく』って読むんだよ。『宿』の読み方、しんちゃんはまだ習っていないんだね」
「うん、まだ。みんしゅくのさたけ・・・、魚のエサ、あります・・・」
松林から真っ青な海が垣間見えると、美里の心もうきうきしてきました。
「次は高巣、高巣。高巣海水浴場においでの方はここでお降りください」
「しんちゃん、降りるよ!」
美里は停車ボタンをおして、さっと、立ち上がりました。
新一も、ぴょこんと、シートから飛び下ります。
「おねえちゃんら、危ねえから、まだ、すわっていね。着いたら、おんさん、教えてやっから」
運転手が、にまっと、二人をふり返りました。
「すいません」
美里は新一に目配せして、シートにもどりました。
ガタン、ブシュー。
バスが止まりました。