がめ島うらしま館(1/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「着いたよ」
「ありがとうございました」
料金をはらって、バスを降りると、高巣のおばさんが、にこにこ、待っていました。
「おばさん、こんにちは」
「よく来たね、二人とも。えらい、えらい」
長ぐつにエプロンすがたの、ちょっと太めのおばさんからは、ぷんと、魚のにおいがしました。

「大介、すごく楽しみにしてるよ、みーちゃんとしんちゃんが来るって。荷物、持とうか?」
「ううん、だいじょうぶです」
三人はバス路線をはなれ、ゆるい坂道を上っていきました。
「二人とも、ちょっと見ない間に大きくなったね! 美里ちゃん、ほんに、かしこそう。学校のお勉強もできるんやろ?」
おばさんが、ちろりと、美里の顔をのぞきこみます。
美里は赤くなって、「いいえ」と、うつむきました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに