がめ島うらしま館(1/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「それに比べてうちの大介ときたら、ミーちゃんと同じ、5年生やというのに、勉強もせんと、ゲームばっかり。このごろは何かいうと、おにいちゃんにつっかかって、困り者なんよ」
「ぼく、3年生になったの」
新一がおばさんの前に、指を3三本、立てました。

「おお、そうやった! しんちゃんも、もう、3年生か。遠足、松島水族館だったんやろ?」
「うん。イルカショー、見たよ」
「そっか、そっか」
おばさんは「うん、うん」とうなずきます。
やがて、道の先に「宮本鮮魚店」のかん板が見えてきました。

店は開いていて、コンクリートの床を水が、ザーザー、洗い、大きな水そうの中で魚が元気におよいでいます。
「こっちよ」
おばさんが店の裏手の玄関で手まねきします。

玄関にはサンダルやシューズが散らばり、ろう下にはトロ箱が積み上がっていて、その奥から、かん高い少年の声が飛んできました。
「ばーか! 浩一のばーか!」
「こら、大介! みーちゃんたちが来てるんよ。はずかしい声、出さないの!」
ドドドっと足音がして、真っ黒に日焼けした丸がり男子が、海パン一枚で、家の奥から出てきました。
「おっす、みーちゃん、しんちゃん! 早く、およぎに行こう!」

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに