がめ島うらしま館(11/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「みーちゃんひとりで、あと3つ、解けるわけない。話している時間がもったいないよ。早く、秋と冬の部屋に行こう!」
美里はほっとして、にっこり、うなずきましたが、すぐに、
「でも・・・」
と、残り2つのとびらを見やりました。

「あたしたち、水着だね。それに、ふたりとも、はだし」
「そっか」
大介も顔をしかめます。二人とも、どちらが冬に入るかを考えたのです。

「だったら、じゃんけんしよ。勝った方が好きな部屋を選ぼう」
じゃんけん、ぽん!
「勝った! おれ、冬ね」
大介ははだかんぼうの胸をそらし、のしのし、冬の部屋に入って行きました。

「ありがとう、大ちゃん」
大介のゆうかんさに心を打たれながら、美里も秋のとびらを開けました。
そこはかがやくばかりの紅葉の林でした。
海は見えませんでしたが、海鳴りと潮のにおいで、海がすぐ近いと分かりました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに