がめ島うらしま館(11/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

そのころ、大介は真冬の海辺にいました。
「うう、はんぱなく寒い」
ぶるぶる、ふるえながらタブレットを見ると、ピカンと、第7問。
「『玉手箱を開けた浦島太郎はどうなったでしょう?』 何や、こんなこと、ここに来なくたって分かるやない!」
「おじいさんになった」と答えようとして、大介は、ぐっと、こらえました。

(わざわざ、こんな簡単な問題、出すやろか、あの意地悪な鶴島かめ代が?)
またペナルティになったら大変です。
大介はふるえる体を手でこすり、足ぶみしながら、何かヒントはないかと、注意深く、辺りを見回しました。

空は暗く、雪がちらつき、波の花があわのように飛んできます。
あちこち、打ち上げられた流木や海そうで、ごみの山ができています。
「あ、あれは!」
向こうから、とぼとぼ、歩いてくる人がいました。
おなじみのポニーテールにこしみのスタイル。その上、箱のようなものをかかえています。

大介は、とっさに、流木の後ろにねころんで、小さい流木になりきりました。
(帰ってみればこわいかに! 浦島太郎、これから、玉手箱を開けるつもりなんや。ここで見ててやろう!)
砂の冷たさは、じんじん、痛いほどでしたが、じっとがまんしていると、太郎は大介のすぐそばまで来て立ち止まり、海を見て、ため息をつきました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに