「おやすみなさい」
と言ってから、気がついた。
今日は、お盆の中日じゃないか?
ということは・・・。
『魂送り』は、明日だ。
賢作さんは、彼の岸へ、帰ってしまう。
ソーメンを作ってくれて一緒に食べた。
焼きそばも作ってくれて一緒に食べた。
けど、それだけで、いいのか、あたし?
なにかを、伝えておきたいけれど、伝え方が、わからない。
でも、その、伝え方、わかったとしても、相手は、ユーレイ、どうしようもないじゃないか・・・。
そんなこと、頭ではわかっているのに、またもやこの口が、勝手に叫ぶ。
「賢作さん!」
この足が、勝手に動く。
家じゅうの明かりを灯し、賢作さんの姿を捜す。
けれど、賢作さんの姿はどこにもなかった。
ついでに言えば、策作じいさんの姿もない。
賢作さんは、ユーレイだから仕方ないとしても、策作じいさんは?
こんなに遅い夜に、どこに行ったんだ?
もの凄く元気そうだけど、佐熊山策作さんはもの凄いじいさんだ。
なにかあったら・・・、とちょっと心配になってくる。
が、いやいやいや、と思い直す。
策作じいさんが、なにかやらかすってことはあるかもしれないが、その身になにかある、なんてことは、ちょっと想像がつかない。
そうだよ、こういう場合の正解は、とりあえずじいさんのことは、あっちに置いて、賢作さんを捜す、じゃないか?
賢作さんが、姿を現してくれるまで。
そうだよ、それで、いい。
とは、思うのだけど・・・。
「あっちに、置けない・・・」
しょうがない。
じいさんを、捜しに行こう。
あたしは、外に、飛び出した。