「あのう・・・、たばこ屋さんからちょっと来たところの、お豆腐屋さんの、小柄で幅のあるおじさんは? 道を聞こうとしましたが、無視されました」
「ああ、3年前に逝っとるな」
「そこからちょっと進んだところの、白髪のおじいさんは? 挨拶しましたが、空をながめていらっしゃいました」
「自転車屋のじじいか?」
「はい」
「あれは、わいの同級生で、去年・・・」
策作じいさんは、宙を睨む。
去年お亡くなりになった方にも、3年前にお亡くなりになった方にも、
「・・・会ってたんですね、あたし」
「見えたり、見えんかったりはするけど、生者か死者か、区別つかん程、普通におる。それが、盆の、花盛り町大字細八」
「字猪甲乙!」と、声、重ねる。
「しかし・・・」
ここで、策作じいさんは、声をひそめた。
「禁句があるんや」
「禁句、ですか?」
「おまえは、すでに、死んでいる」
「すでに、死んでいる、ですか?」
「ほうや」
・・・どこかで、聞いたこと、あるようなフレーズだなあ・・・、それに、わざわざ、そんなこと言う機会もないと思う。
でも、
「了解しました」