ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(3/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

こんなときに白状するのもなんだけど、あたしは、早とちりしちゃうことも激しく多い。
が、今回ばかりは、あたしだけの問題じゃないような気もする。
策作じいさんの話し方というか、人を煙に巻くような非常に紛らわしい物言いのせいも多分にあると思う。
でも、
「ありがとうございますっ!」
「礼にはおよばん」
「いえいえ、じゅうぶん、およんでますから」
「礼には、およばん」
「いえいえいえいえ」
「お互いさまやから」
「いえいえ、えっ? お互い、さま、ですか?」
「そうや。わいも、キツツキに、してほしいことがあるんや」
策作じいさんはあたしをぐぐっと見据えてから、ふいっと視線を遠くに放つ。

「しのちゃん、いや、ばあさんと・・・」
「あの・・・、さっきから思っていたのですが、」
「なんや?」
「わざわざ、ばあさんって言い換えなくても、しのちゃんでいいんじゃないですか?」
「そ、そうか・・・。そやな」
そんな、頬染めなくてもいいんじゃないですか? は心の声に留めておいて、
「で、あたしは、なにをすれば?」
「ここでワラジを脱げ。この家に3日間おって、わいの手伝いをする。そんだけや」
ああ、それだけか。

ここの地区の宿には、どうしても連絡がつかなくて、いざとなったらなんとかなるさ気分で来てしまったあたしにとっては、いい条件だ。
棚から牡丹餅、弾んだ気分で返事した。
「了解しましたっ!」
そんだけが、どんだけか、知らないまんま。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。