「さあ、そうと決まったら、さっそく行こか」
「はい、どこへ?」
「海に決まってるやないか」
「決まってたの、ですか?」
なんて、策作じいさん主導の会話の途中、その白い影は、廊下に現れた。
玄関の方から台所の方へ、移動していく。
ちょっと離れていたから、ぼんやり見えただけだけど。
変わった帽子はかぶっていなかったけど。
笑顔でもなかったようだけど。
あたしは、すぐにわかった。
彼だ!
引き締まった頬の線、しなやかそうな身のこなし、その上、長身で、細身で・・・。
あたしの口は、
「おまえ、キツツキ、口、ぽっかんと開いてるで」
状態だった、らしい。
「あ、あ、あ・・・」台所を指さす。
「スイカおかわりしたいんか?」
「はいっ! いえ、」
「どっちや? スイカ、食べるんか、食べんのか、それとも、水分補給に持っていくんか」
「・・・じゃ水分補給に、って、いえ、そうじゃなくて、台所の方へ、あの人が・・・」
「あの人って、どの人や?」
「しゃ、写真の人、佐熊山策作さんのお兄さんです! あたし、確認してきます!」