ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(4/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「さあ、そうと決まったら、さっそく行こか」
「はい、どこへ?」
「海に決まってるやないか」
「決まってたの、ですか?」
なんて、策作じいさん主導の会話の途中、その白い影は、廊下に現れた。
玄関の方から台所の方へ、移動していく。

ちょっと離れていたから、ぼんやり見えただけだけど。
変わった帽子はかぶっていなかったけど。
笑顔でもなかったようだけど。
あたしは、すぐにわかった。

彼だ!
引き締まった頬の線、しなやかそうな身のこなし、その上、長身で、細身で・・・。
あたしの口は、
「おまえ、キツツキ、口、ぽっかんと開いてるで」
状態だった、らしい。

「あ、あ、あ・・・」台所を指さす。
「スイカおかわりしたいんか?」
「はいっ! いえ、」
「どっちや? スイカ、食べるんか、食べんのか、それとも、水分補給に持っていくんか」
「・・・じゃ水分補給に、って、いえ、そうじゃなくて、台所の方へ、あの人が・・・」
「あの人って、どの人や?」
「しゃ、写真の人、佐熊山策作さんのお兄さんです! あたし、確認してきます!」

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。