塩アメ、なめて、また、進む。
そこで、あれっ、と気がついた。
策作じいさんって、家を出る時、手ぶらだったよな?
ユーレイの自転車屋のじいさんでさえ、くらっとくる炎天下。
生身の策作じいさん、水分補給も塩分補給もしてなくて大丈夫か?
早く追いつき、このヒスイを見せよう、いやいや、塩アメをなめさせる方が先だな。
どこにいるんだ?
遠く目を凝らしても続く海岸線に姿はない。
海辺には、群れを成した白い鳥たちが、低く飛んでいるばかりだ。
ウミネコ、か?
こんなに近くで見るのは、初めてだ。
もっと、近くで見てみたい!
じいさん捜しは一瞬忘れ、所々に重ね置かれた、波けしブロックに向かい、よじ登る。
と、見つけた!
策作じいさんだ!
海とブロックの間にいる。
ヒスイ探しをしているとばかり思ってたけど、じいさんたら、呆れた! 楽しそうに猫と遊んでる。
寄せては返す波を相手に、逃げてみたり、追いかけてみたり。
「佐熊山・・・」
策作さんと、呼びかけようとして、やめる。もう少し、見ていよう。
きれいな猫だ。
走る時、すらりとした身体から、地面と水平に、すうっと伸びる尾。
しなやかな身のこなし。
優雅な白猫だ。