いつの間に戯れるのをやめたのか、策作じいさんと白猫は向かい合っている。
白猫が座ると、じいさんもしゃがむ。
白猫は、なにか語りかけている。ように見える。
バックには、青い海と白い波。
水面高く低く行く、ウミネコ。
真っ青な空、BGMは波の音。
白と青の世界の中で、彼らは一人と一匹ではなくて、二人って感じがする。
しばらくすると、白猫はじいさんの膝に前足をかけた。
首を伸ばして、自分の鼻先を、じいさんの鼻にちょんっとくっつける。
そして、前足を膝から外し、じいさんに背を向けた。
「チョウコ」
じいさんに呼ばれ、白猫の足が止る。
「なーん」
「ほうか、行くか」
声をかけられても、白猫はふり返らない。
けれど、
「なーん」
と鳴いたその時に、きらんと瞳が輝いた。
泣いてるみたいだ。
と思ったとたん、白猫は、海に向かって走り出す。
波を蹴り、白い鳥のように空に昇っていって、やがて、見えなくなった。
それでも、策作じいさんは、見えなくなった白い点を追うように、空を見上げている。