波打ち際から、策作じいさんがもどる。
「今日はもう帰ろか」
「でも、」
ポケットの中、さっきもらったヒスイを探り、あのこれ、どうぞ、と取り出す前に策作じいさんは踵を返す。
「あのな」
「はい」
「さっきの猫、キツツキには見えたか?」
「はい。あの子、チョウコっていうんですね」
「ほうや。チョウコはな・・・」
帰る道すがら、じいさんは話してくれた。
チョウコは、戦闘機乗りのお兄さんが、亡くなったと報せが来た年、庭に迷い込んできたそうな。
「生まれて、1、2か月ほどの小さい猫やった」
人なつっこい性格で、すぐに家族になつき、
「あっち行き、こっち行き、身軽に動きまわる様子が、蝶々が花から花へ飛び回るみたいやったから、」
チョウコという名をもらい、佐熊山家の猫になったということだ。