つなぐ(1/10)

文・藤 紫子  

「さあて、出発しよう。清枝さん、あとでな」
よろめきながら立ち上がったおじいさんは、写真のほうへ手を伸ばしました。
おとなりの、手の平くらいのお守りをそっとつかみました。
上着の右がわの内ポケットに入れると、ポケットをぽんぽんとたたいてみました。

「よし。入っておるな」
反対がわのポケットもぽんぽんとたたきました。
おさいふが入っているはずです。
いつも入れっぱなしにしているおさいふです。
「よし、よし」
すっかり準備ができあがったおじいさんは、山高帽をかぶって、家をあとにしました。

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。