「うむ。では、読ませていただこう」
机にもどり、封を開けました。
便せんがていねいに四つに折られていました。
広げると、封筒と同じ緑色の紙に、中心に大きな四葉のクローバーがすかして印刷されていました。
伸びやかで、跳びはねるような読みやすい文字がならんでいます。
「澤さま
はじめまして。林 里依(りい)・安藤 舞といいます。お手紙をありがとうございます。
読ませていただき、澤さんにとって、とても大事な物をわたしたちがたまたま見つけたということを知りました。長いあいだ大切にされてきた、奥さんのあたたかい想いがこもったお守りが、澤さんのところにもどれて、本当に良かったと思っています。
実のところ、あのときは、お守りだからだれかの大切なものなんだろうな、くらいにしか思いませんでした。拾って、目立つところにおいておけば、見つけやすいかなって、そんな軽い気持ちだったんです。
澤さんからお手紙をいただくほどのことをしたとは思っていなかったですし、すっかり忘れてもいました。
ですので、駅の人に声をかけられたときは、とってもおどろきました。お手紙を渡されて、もっとおどろきました。
でも、それよりも、うれしさの方がずっとずっと大きかったです。
うれしさをくださり、ありがとうございました。
末筆ながら、どうぞ、お体を大事にされて、いつまでもお元気でいてください。
林・安藤」