つなぐ(10/10)

文・藤 紫子  

庭の見える窓辺の陽だまりで、おじいさんはくり返し読みました。
目じりに横じわをつくり、口元をほころばせています。
「こんなに気持ちが良いことはない」

小鳥の声が耳に入ってきました。
外に目をやると、声の主が、とっくに冬支度を終えた木にとまっているのが見えました。
小鳥はしきりに小さな頭を動かし、体の向きを細かく変え、尾を上下させて鳴いています。
――と、ほんのわずかのあいだに体に力をためた小鳥は、ぱっと空へ飛び立ってゆきました。
それを見届けたおじいさんは、新しい宝物となった手紙を持って、陽だまりをあとにしました。

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。