つなぐ(2/10)

文・藤 紫子  

のぞくと、優先席がひとつ、空いておりました。
電車が動かないうちに、なんとかこしを落ち着かせることができました。
電車はウィーンと電子音を鳴らしながら、少しずつスピードを上げます。
窓の外は、商店やパチンコ屋や大型スーパー、家々などが、右から左へ飛びさっていきます。線路わきからずうっと向こうまで、いろんな色の建物が広がっています。
「にぎやかになったな」

おじいさんの目が急に遠くなりました。
戦争が終わり、やっとの思いで戦地から家路についたときの光景が思い出されたのです。

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。