――すすけた石炭と、ほこりっぽいような土っぽいようなにおいに満ちた、汽車のなか。
座席も通路もデッキも、故郷を目指す元兵隊さんたちや、物を売りに行く人たちなどでぎっしりうまっています。
網棚で寝ている人もいます。
さいわい、窓がわの席に座れた若者だったおじいさんは、移り変わる外の様子をじっとながめていました。
深い緑の美しい山なみに、地形に沿ってカーブをえがく田畑。
雨つゆをしのぐための赤茶けた小屋群や、空ばくでこわされてできたがれきの上を歩く人々・・・。
久しぶりに見た自分の国に、感激したり、むごたらしいありさまにいたたまれなくなったり、生きて帰ってこられたうれしさに涙したりしました。