花束をかかえて駅にもどったおじいさんは、券売機でふたたび切符を買いました。
こんどは郊外に向かうのです。
切符をまた、上着の右がわの内ポケットにしまうと、ホームへ向かいました。
お客さんがほとんどいない列車が、出発のときを待っていました。
「空いていて助かるな」
とびらのすぐそばの席にそっと花束をおき、となりにこしかけたときです。
(んっ?)
お守りを取りだそうと、ポケットのなかに手を入れたところ、切符しかありませんでした。
仏だんから下ろした、あの、あたたかで優しい肌ざわりのお守りが手にふれないのです。
おじいさんは、上着の右がわをぱっと開けました。ポケットのなかをのぞきます。
暗くて見えません。
上着をぬぎました。
「入っていてくれぇ。入っていてくれぇ・・・」