祈るようにつぶやきながら、外がわからたん念にポケットをさわりました。
「ない!」
念のため、もう一度なかをまさぐりました。
やはり、ありません。
ふるえる手で、左がわのポケットを探しました。
上着のほかのポケットも、ズボンのポケットも、座席の周りも、足元も、目をこらしてけんめいに探しました。
「ないっ!」
顔は真っ青になり、心ぞうはドラムのようです。
「右がわのポケットから物を取りだしたのは――、花屋さんに寄るために、改札を出ようとしたときだ。その前はいつだ」
思い当たりませんでした。
「まちがいない。切符を取りだしたときに落としてしまったんだ!」