つなぐ(6/10)

文・藤 紫子  

戦地で、おじいさんの心を支えてくれただけではありません。
戦争が終わって家に帰りついたときに、ばく撃で清枝さんが亡くなっていたことを知って、深い悲しみの底につき落とされたときも、おじいさんの心を支えてくれました。
清枝さんのお守りは、一人きりで生きてきたおじいさんと、長い年月を一緒にすごしてきたのです。

いよいよ電車の出発じこくになったときです。
改札とホームを行き交う人たちのすきまから、何かが目に入りました。
白い小さな物です。
ホームから改札へ、十段くらいある階段を上ぼりきった、手すりのところにあります。

はっとしたおじいさんは、とびらを閉める合図が鳴るなか、電車を飛びだしました。
心がざわつきます。
白い物だけに目をこらしながら、階段に近寄りました。

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。