「わけを、はなしちゃ くれないかい?」
「どらはちさんに かりた にぼしが、かえせないんだ」
「なんで にぼしなど、かりたんだい、ぼうず」
「からだの よわい おとっちゃんに、えいようを つけて あげたかったんだ」
「おとっちゃんが びょうきなのかい?」
こネコは だまって うつむいた。
「ぼうずは、おとっちゃん おもい なんだなぁ」
たまさぶろうは こネコの あたまを、そっと なでて やった。
「ぼうずの なは、なんという?」
「さんきち だよ」
「そうかい、いまは とにかく、おっかさんを たすけなくちゃ いけねぇな」
たまさぶろうは、すっくと たちあがると、
どらはちの まえに ずん、と たちはだかった。
「よわいものいじめは およしなせぇ」
どらはちが、ぎろりと めだまを ひからせる。