ふわり たまさぶろう

文・季巳明代   絵・もも りこ

「しゃらくせえ」
どらはちが、めを つりあげ キバを むいた。
「おんな こどもを いじめる やつは、ゆるしちゃ おけませんぜ」

たまさぶろうは、かさと かっぱを そらたかく なげすてると、ヒラリと みを かわし、りょうてを ばってんにした。
そして なにやら じゅもんを となえはじめた。

「ふわり、ふわりの たまさぶろう、あくを こらしめ、せいぎを つらぬく、ネコよんで、ふわりのたまさぶろう とは、おいらのことでぃ」
すると、たまさぶろうの りょうてから、たんぽぽの わたげの ような ものが、ふわり ふわりと とびだしたでは ないか。
これは たまさぶろうが、ねこやまに こもって しゅぎょうを つんだ わざ。
その なも、「ひっさつ わたぼうし」
たまさぶろうの てから どんどん わたげが とびだす。
「ふ、ふ、ふあっくしょーーーーん」
どらはちは、たまりかねて おおきな くしゃみを した。

「ふぉやゃ、たまらん、ほ、ほぼえへろよ」
どらはちは、ずるずると はなみずを すすり、ぼろぼろと なみだを おとしながら にげて いった。

季巳明代(きみ あきよ) について

鹿児島県出水市在住 保育士時代に公募にはまり、幼年童話作家をめざす。 毎日童話新人賞優秀賞、新美南吉童話賞特別賞、など受賞多数。 作品に『てんぷら母ちゃん』(家族っていいね3・4年生収録/日本児童文芸家協会編/PHP研究所)』 『ウドちゃんとチョロくん』(ぼくたちの勇気)収録/編著/漆原智良/国土社)』 『よっていっきゃんせ!』(児童文芸収録/日本児童文芸家協会編)』 単著に『ひげなしネコ』『じゅんばんこ!』『四年変組』『りほちゃんのめざし』(以上フレーベル館)、『ひっこしはバスにのって』(銀の鈴社)。キンダーブック2に、『にんにんにんじゃえん どろろんぐみ』を連載中。(いずれもフレーベル館

もも りこ について

1981年生まれ、崇城大学芸術学科彫刻部卒業。 学んだ彫刻の技術を活かし、いろいろなことに挑戦中。