「うおおおおーっ」
ボサボサの髪、生きた人間には見えない顔で、獣のように吠えながら、ソレは、こっちにやって来る。
ボロボロの衣装をまとい、体を前後左右に揺らし、がくがくとした足取りで。
「ゾゾゾゾ、ゾンビ・・・」
足の力が、抜ける。
「うおおおおおおーっ」
ゾンビが、吠える。
「うっわ~~~~っ!」
ぼくの叫びが、天を衝く。
「んなぁーご」
穏やかな猫の声がなかったら、ぼくは、たぶん、ぶったおれてた。
猫の励ましと声援(かどうかわからないけど)を受けて、ぼくは、丹田に力を込めた。
こんな時は、まず、状況を見極め把握する。
冷静に、なる!
そうだ、冷静!
しかし、だいたいゾンビなんていうものが、存在するのか? と考える余裕は、なかった。
「うおおおおおおーっ!」
ソレは、ゾンビは、もう、すぐそばにいて、ぼくの腕につかみかかった。と、同時に、ぼくの体が動き、気がつくと、ゾンビを地面に転がしていた。