ぼくたちは夏の道で(4/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「連絡先は、あっ、山野辺さんだ! ってことは?」
「そう、うちの子」
なるほど。
そうだったのか。
山野辺さんは、このポスターを貼りに来た。
そして、パピが早く見つかるようにと祈りをこめて、このポスターを見つめていたんだろう。

パピは、いま、どうしているだろう・・・。
どこに、身をひそめているのだろう・・・。
お腹を減らして、たおれていないか・・・。
そして、なにより、無事でいるのだろうか?

なんて心配もしながら、山野辺さんは、このポスターを・・・。
ああ、それなら、
「山野辺さん! びっくり返しなんて、している場合じゃないです!」
気がついたら、叫んでた。
けれど、すぐに後悔もした。

「あっ、・・・すみません、大声出して」
車の中から見かけた時の、ちょっとさみし気な背中、思い出したんだ。
山野辺さんは、ほんとうは心配でたまらないけど、それを表に出したくないんだ、きっと。

「ぼく、がんばります!」
「んっ? なにを?」
「パピを、捜します!」
「そうか、ありがとう」
静かにそう言う山野辺さんと、視線が合った。
またまた、ドキッ!

「えっ、いえ、どういたしまして」
「でもな・・・、」
言いかけて、山野辺さんが、言葉をためる。
「はい」
続きを、と促してみたが、「でもな」の後は、聞こえなかった。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。