いま、ぼくは、電柱に向き合って、とほうにくれている。
昨日見たポスターが、消えていたんだ。
これは、もしかしたら、喜ぶべき状況かもしれない。
パピは、もう、すでに、見つかった。
だから、ポスターは必要なくなった。
そういうことなら、ぼくもうれしい。
が、そうじゃない場合も考えられる。
だれかが、故意に、はがしていった。
どっちにしても、確かめたい。
そう、ぼくは、思った。
しかし、どうしたら、確かめられる?
パピの情報は、頭に入っている。
けれど、山野辺さんの連絡先は、おぼろげな記憶しか残っていない。
きちんと記憶、しておくべきだった・・・。
思わず、空をあおぐと、足元で声がした。
「エエエエッ」
チャッピーが、心配そうに、見上げてる。
「あれ、ついてきてくれたのか」
「エエエッ、なあん」
チャッピーが、ダイジョウブ? とでも言うように、小さな体を、寄せてくる。
なぐさめてくれてるんだと思ったら、うるうるしてきた。
「あ・・・、ありがとう」
しゃがみこんで、チャッピーの頭をなでた、その時だった。
「如月幸太、いや、如月くん」
上から声が、降ってきた。
その声は・・・。
見上げると、会いたい人が、そこにいた。
「や、山野辺さん! 驚き、桃の木、さんしょの木・・・」
「こんなところで、なにを? なぜ、泣いている? お腹でも減ったのか?」
「泣いては、いません。お腹は、・・・そういえば、減ってます。でも、そんなことより、ポスターが、」
「はがされてるな・・・」
山野辺さんは首を傾げた。
「ということは、パピは、まだ見つかっていない、のでしょうか?」
「うん。かな」
「かな、って山野辺さん。そんな悠長な・・・」
「ごめん。でもな・・・。如月くん、時間あるなら、」
ついて来て、と山野辺さんは背を向けた。