「チャッピー」
ぼくは、追いかける。
「チャッピー、チャッピー」
木々の奥へと走っていくと、よかった! チャッピーの姿が見えた。
こちらに向かい、走ってくる。
うしろに、白い猫をひきつれるようにして。
「パピ!」
ぼくを追い越した山野辺さんが、大きく腕を広げた。
すると、白い猫は、パピは、地面をけって、腕の中におさまった。
山野辺さんのあごの辺りに、頭をくいくい、くいくいと、すり寄せている。
満面の笑みを浮かべて、それを受け入れる山野辺さんを見ていたら、鼻の奥が痛くなってきた。
「なんか・・・、よ、よかった・・・。なっ、チャッピー」
ほの暗い森の中、パピの白い毛並が、うっすらと金色に輝いている。
「パピ、迎えに来たよ・・・。おまえ、どこに、いるんだ? わたしを、おねえちゃんを、おまえのいる、・・・おまえの体のある所に連れて行きなさい」
って・・・。
「山野辺さん、なに言ってるんですか? パピは、そこに、山野辺さんの腕の中に、いるじゃないですか」
「あのな・・・」
山野辺さんは、ためらうようにふせた目をあげ、
「とりあえず、一旦落ち着こう」
木漏れ日がゆれる辺りを指し示す。
「はい」
ぼくたちが、腰をおろすと、猫たちも前足をそろえて寄り添う。