ぼくたちは夏の道で(7/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

山野辺さんは、ここに来れば、きっとパピに会えると思っていたと言った。
「ここで、ほら、そこを、」
木々の向こうに、指先を向ける。
「もう少し行った所で、いつも一緒に遊んだ。わたしとパピと、ああ、あいつも時々一緒だった・・・」

「あいつ?」
「ああ、チビの下級生。わたしより1学年下だから・・・、あの頃は小4だ」
あいつ。
チビの下級生。
その言葉から推測すると、男子、だな。
山野辺さんと一緒に遊んだというあいつが、ちょっと、うらやましい!

「パピは、山にいた。捨てられたのか、迷子になったのか、わからないけど。蝶の観察で山に行った時、にーにー鳴いているのをあいつが見つけた」
「下級生でチビのあいつと一緒に山に?」
「一緒に行ったわけじゃない。勝手について来た」
「そうですか」
と言いつつも、
「眉間に、しわ寄ってるよ」
なんて指摘うけるのは、どうしてだ?

チビの下級生の話題がでるたびに、心がザワザワするのは、なぜだ?
「で、パピは、あいつの家の子になった」
「それが、なぜ?」
「あいつの弟、猫アレルギーだったんだ。だから、パピはわたしの家に来ることになった」
「・・・あいつ、かわいそうでしたね」

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。