孝太のなにげないさそいに、くるみはおこったような返事をした。
「かわいいのぐらい知ってるよ。でも、わたしはもう犬のことキライだから。散歩もいかない。じゃあ、ごめんね、いまから絵の教室にいくから」
そう言って絵かき道具の入ったカバンをかけ直すと、くるみは逃げるように走り出した。
入れかわるように、公園の横に建つ新しい家からゆいの母親がゆったりと出てきた。
「ふたりとも、待たせてごめんね。じゃあ、お散歩いこっか。ねえ、さっき走っていったの、くるみちゃんじゃない?」
「おばちゃん、くるみは犬キライなんだって、かわいいのに変だよね?」
「孝太くん、変じゃないんだよ。苦手な人もいるんだから、ムリにすすめたらぜったいにダメ。ゆいもわかった?」
すると、ゆいは少し口をとがらせて言った。
「でも、くるみちゃんのおうちだって、前は飼ってたんだもん。エルっていうおっきくて、やさしい犬」