「くるみ、死がいつおとずれるのかはだれにもわからない。旅立ちのときにそばにいられなかったのは残念だけど・・・。そばで見送れたとしても、犬との別れはぜったいに苦しく悲しいんだ」
お父さんは大きく息を吸った。
「エルはいっしょうけんめい病気と戦った。お父さんやお母さんも、毎日やれるだけの応援(おうえん)をしたと思ってる。だから、そういう点ではこうかいはない。エルは、本当によくがんばった。『ごめん』って泣いてあやまるんじゃなくて、お父さんはエルをほめてやりたいんだ。さいごまでいっしょうけんめいに生きたな、えらいなって。いっしょに生きてくれてありがとうって」
くるみは、お父さんがいつも「えらいな、よくがんばってるな」そういう風にエルをはげましていたことを思い出した。エルが不安にならないように、そうしているのだと、お母さんがいつだったか教えてくれた。
「お父さんは、エルのことを悲しい思い出にしたくない。エルは、いつも楽しそうに目を細めて、笑ってしっぽをふっていたよな」
くるみは涙がでた。みんなのそばでゆっくりとしっぽをふっていたエルが目の前に見えるような気がしたからだ。