小糸が、とつぜんの流行り病で亡くなったのは、そろそろ、山の木の葉が色づくころでした。
おまつのなげきようは、目をおおうばかり。
娘のなきがらにすがって、いつまでも、おいおいと、泣いていました。
「気の毒だなや。先年、亭主ば亡くしたばかりだっつのに」
「んでも、ずっと、ああしておくわけにもいかねべ。いいかげん、娘ばほうむらんと」
村人たちは、いやがるおまつを、むりやり、ひきはなして、小糸のなきがらを、村はずれの無住のお寺にほうむりました。
おまつは、真新しい、小さなお墓の前で、何日も、何日も、泣きふしていました。
どのぐらいたったころでしょう。
名主の庄兵衛の家に、ひょろひょろにやせたばあさまが、転がりこんで来ました。
ばあさまは、土間にくずおれるなり、さけびました。