「結界って、なんだべ?」
みなで山の入り口に行ってみると、坂道を、少し、登った所に、行者のつえが、かたむいて、ヨロっと、立っていました。
「あれだべおん」
「なんだべ、たよりねえな」
村人はがっかりしてしまいました。
「行者様は、ああ、おおせだが、もどって来るだべか?」
「いや、おら、こんりんざい、もどって来ねえと思う」
その後、何日もたってから、吉野山へ行った使いの二人が、行者と入れちがいに、やっと、村に帰って来ました。
「なずだったべ? 行者様はオニば退治してくれたべか?」
与作と田平が聞いても、みな、ふきげんに首をふるばかり。
庄兵衛だけが、
「ご苦労様じゃったな」
と、ねぎらったのでした。